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アロジン処理とは?工程やアルマイト処理との違いをわかりやすく解説

アロジン処理とは?工程やアルマイト処理との違いをわかりやすく解説

「アロジン処理って具体的にどんなもの?」
「他の処理と比べてどのような特徴があるんだろう?」

アルミニウム合金に対する処理の1つに、アロジン処理と呼ばれるものがあります。アルミニウムに対して施す処理方法としては有名なものですが、いまいちどのようなものかつかめていない方も多いのではないでしょうか。

この記事ではアロジン処理について具体的に解説するとともに、それ以外の処理とどのような違いがあるのか、また少し込み入った知識として、6価クロムと3価クロムにどのような違いがあるのかといったことにも言及します。

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アロジン処理とは

アロジン処理とは、アルミニウム合金に対して防錆処理として施すクロメート処理のことです。

これだけでは専門用語を専門用語で置き換えただけになってしまうので、1つ1つ具体的に解説していきましょう。

まず、アルミニウム合金は錆びない金属であると思っている方が少なくありませんが、実際には「錆びにくい」のであって、決して錆びないわけではありません。アルミニウム合金が錆びる理由としては、主に以下の3つが挙げられます。

第1に孔食です。孔食とはアルミニウム合金の中に塩化物イオンが存在した場合に、酸化アルミニウムの保護膜が部分的に破壊されてしまうことで発生するもの。大気中であっても塩気のある環境では比較的簡単に発生します。

第2に粒界腐食です。金属とは小さな粒の結晶が結びついたものですが、この粒のあいだには「粒界」と呼ばれる境界面が存在します。この部分は結晶部分と比べると不純物が溜まっていたり、原子の並びが乱れていたりするため、腐食に弱い性質があります。この部分が腐食してしまうのが粒界腐食です。

第3に異種金属接触腐食です。アルミニウム合金を銅合金やステンレス鋼と接合して使うと、電位の低いアルミニウム合金のほうが錆び始めてしまいます。アルミニウムはとくに電位の低い金属なので、水に含まれているわずかな銅イオンや鉄イオンでも腐食が進んでしまう可能性があります。

こういった理由から発生するアルミニウム合金の錆を防ぐ方法として存在するのが、クロメート処理です。クロメート処理とは、クロム酸塩溶液(あるいはクロメート処理液)を使って金属素材の表面に皮膜を作り、防錆性を向上させるというものです。

クロメート処理を施したアルミ材のことを一般にアロジンと呼ぶため、アルミニウム合金に対して行うクロメート処理はアロジン処理と呼ばれています。

ちなみに「アロジン」は日本パーカライジング社の登録商標であり、ビジネスにおいて無条件に用いることはできません。

 

アロジン処理をする4つのメリット

アルミニウム合金に対してアロジン処理をおこなうメリットとしては、以下の4つが挙げられます。

  1. 膜厚が薄い
  2. 電気伝導が生じる
  3. 錆に強くなる
  4. 塗装の下地工程に向いている

いずれもアロジン処理を選ぶ理由として大きなものばかりなので、以下の解説を読んでしっかり把握しておきましょう。

 

メリット①:膜厚が薄い

アロジン処理はアルミニウム合金の表面に対して処理を施すものです。表面に膜のようなものを作り、その部分に新たな性質を付与させることを目的としています。

アロジン処理によって作られる膜は、厚みが1μm以下と非常に薄いことに特徴があります。大きなアルミニウム素材に対して処理をおこなう場合にはあまり関係がありませんが、小さなアルミニウム素材を扱う場合や、複雑な形状のアルミニウム素材を扱う場合には、膜圧の薄さが取り扱いのしやすさに直結します。

アロジン処理によって作られた薄い皮膜(アルミニウムのクロメート皮膜)は、塗装する場合やゴムを接着させる接合下地などに適しています。

 

メリット②:電気伝導が生じる

アロジン処理以外の方法では表面に不動耐性を持った皮膜が作られる場合が多いのですが、アロジン処理の場合にはそれがありません。これにより処理を施したアルミニウム合金にも電気を通すことが可能になります。

なかでもアロジン#1000(見た目の色が変わらないタイプのアロジン処理)は電気抵抗がとても低いので、電気がよく伝わることを求められる場合にアルミニウム合金に対して施す処理として適しています。

 

メリット③:錆に強くなる

これはすでに述べた特徴ですが、アロジン処理を施すことでアルミニウム合金の表面にクロメート皮膜というものが作られ、錆に対して強くなります。

結果として耐食性が向上し、長期にわたって使い続けることが前提の部品や、空気中に不足しやすい成分が多く含まれている場所で使用する部品の素材として、アルミニウム合金を用いることが可能となります。

【関連記事】アルミダイカストは錆びないって本当?錆を防ぐ具体的な方法を解説!

 

メリット④:塗装の下地工程に向いている

アロジン処理を施したアルミニウム合金の表面は、塗装密着性が高まるため、素の状態のアルミニウム合金と比べてさまざまな塗装処理がしやすくなります。

そのためアルミニウム素材に対して何らかの塗装を行う前に、下地工程としてアロジン処理を施すことがよくあります。こうすることによって塗装が剥げにくくなり、部品として長持ちすることが期待できるからです。

 

アロジン処理の工程

アロジン処理に使われるのは、リン酸、クロム酸、あるいは重クロム酸を主成分とする処理液です。対象となるアルミニウム素材に対してこれらの処理液に処理することにより、アロジンと呼ばれる状態ができ上がります。

その具体的な工程を簡単に表すと、以下のようになります。

脱脂→洗浄→除錆→洗浄→表面調整→皮膜化成→洗浄→湯洗→乾燥

まずは表面の脂や錆を取り除いて洗浄し、調整をおこないます。それから前述した処理液を使って皮膜を作り、それが安定したところで再び洗浄、そして湯洗・乾燥と進んでいきます。

優れたアロジン処理を成功させるためには、アルミニウム素材の表面に余計な成分が付着していないことがポイントとなります。そのため上記の工程において、最初の脱脂と助錆は入念におこなわなくてはいけません。表面に余計な成分が付着したまま処理をした場合、その付着した成分ごと皮膜が剥がれてしまう恐れがあります。

 

アロジン処理とアルマイト処理の違い

アルミニウム合金に対して施す処理として、アロジン処理の他にアルマイト処理と呼ばれるものもあります。両者の違いを理解していただくために、まずはアルマイト処理について解説します。

アルマイト処理とは、アルミニウム合金の表面に陽極酸化皮膜を作り出す処理のことです。陽極酸化皮膜は耐食性が高いといわれており、アロジン処理と同じようにアルミニウム素材をよりさまざまな環境に強いものにしてくれます。またアルマイト皮膜に存在する微細な孔には染料を付着させられるので、アルミニウム素材をカラーリングしやすくなるという特徴もあります。

ただしアルマイト処理によって生成されるアルマイト皮膜はアルカリ性に弱いので、アルカリ環境においては使用に適していません。

アロジン処理によって生成されるクロメート皮膜は、アルマイト皮膜と比べると耐食性や耐磨耗性の点では若干劣ります。しかし「処理に要する時間が短い」「電解処理のプロセスが必要ない」などの長所から、耐食性がそれほど強く求められない場合にはアロジン処理のほうが広く利用されています。

 

6価クロムと3価クロムの違い

通常アロジン処理には6価クロムが用いられますが、ここで詳しい方は「6価クロムはRohsなどの規制の対象ではないか?」と思ったかもしれません。

実はアロジン処理においても、6価クロムではなく3価クロムを用いる代替処理が存在します。

6価クロムと3価クロムの違いについては、おおむね以下のように捉えておけばよいでしょう。

6価クロムは人体に有害で、微粒子を呼吸によって取り込み続けていると肺がんなどの病気を引き起こす可能性があります。また環境への負担も大きいといわれています。しかし6価クロムによってメッキされた製品に毒性はまったくありません。3価クロムと比べると耐食性に優れており、逆に密着性の点では劣っています。

3価クロムは人体に無害であるばかりでなく、必須ミネラルのうちの1つでもあります。自然界にも存在するものなので、環境への負担という意味では6価クロムよりはるかに安全です。耐食性で6価クロムに劣る代わりに密着性には優れており、環境になるべく負担をかけるべきでない条件下で用いられがちです。

 

まとめ

アルミニウムに対する表面処理であるアロジン処理について解説しました。

アルミニウムはそのままでは錆びる可能性のある金属で、耐久性の高い部品を作るためにはしっかりとした加工が必要になります。アロジン処理は比較的手間がかからないことや電気を通しやすい性質などから、使い勝手の良い処理方法として広く使われています。

この記事を参考にして、アロジン処理への理解を深めてみてください。

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