私たちの身の回りにある多種多様な製品に使用されるダイカスト。
その材料のひとつである「亜鉛合金」は、硬くて耐衝撃性に優れた性質をもつ上に、高い加工性を有しています。
この記事では、亜鉛ダイカストについて徹底解説します。
目次
亜鉛ダイカストの5つの特徴
流動性が高く、薄く複雑な形状の製品を高い精度で製造することができる「亜鉛ダイカスト」。
その性質の主たる特徴としては、下記の5点が挙げられます。
特徴①:硬度が高い
亜鉛ダイカストの特筆すべき材質特徴は「硬度の高さ」です。
亜鉛ダイカストは衝撃にも強くて硬い特徴をもつため、あらゆる製品や部品に使われています。
特徴②:耐衝撃性が高い
次に、「耐衝撃性の高さ」です。
物理的には硬度が高いと「脆く、耐衝撃性が低くなる」ことが一般的です。
しかし、亜鉛ダイカストは硬く、かつ高い耐衝撃性に優れている点が大きな特徴です。
特徴③:加工性が高い
続いては、「流動性の高さ」です。
材質の流動性が高いため、薄肉で複雑な形状に対応可能で、高い加工性を要する部品・製品の製造に適しています。
特徴④:多様な表面処理が可能
亜鉛ダイカストの鋳造製品の表面は極めて滑らかであり、塗装やめっきなどの表面処理が容易です。
そのため、色・質感ともに美しく、多様な部品・製品を製造することが可能です。
逆にいえば、腐食対策として表面処理が必須になる場合もある、という特徴をもっています。
特徴⑤:融点が低いため金型寿命が長い
亜鉛ダイカストは、アルミダイカストと比較して、「融点が低い」特徴をもっています。
そのため、金型寿命が極めて長く、製造のコストダウンを実現することができます。
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亜鉛ダイカストの材料
亜鉛ダイカストの材料は「亜鉛合金」です。現在ダイカスト製品に使用されている合金には、アルミニウム合金、亜鉛合金、マグネシウム合金のほか、わずかではあるが銅合金、錫合金、鉛合金なども使用されています。
亜鉛合金ダイカストは、JISH5301:1990に規定されており、日本で使用されている亜鉛合金ダイカストの種類は以下の2種。
化学組成としては、日本の国家規格JIS(日本産業規格)においてZn-Al-Cu系とZn-Al系の2種類が規定されているのみで、そのほとんどがZDC2です(※1)。
参考:日本鋳造工学会関東支部
ZDC1
「機械的性質と耐食性」に優れた特徴があります。
特に、機能の高い品質が要求される機械部品や保安部品にはZDC1が用いられることが多いです。
使用部品例として、シートベルト巻き取り金具、ファスナーのつまみなどがあります。
ZDC2
「鍛造性とめっき性」に優れています。
製品の品質や加工性、コストの面から、通常の製品ではZDC2が用いられることが多いです。
使用部品例は、自動車ドアハンドル、ドアレバー、PCコネクター、業務用冷蔵庫ドアハンドルなどがあります。
亜鉛ダイカストとアルミダイカストの違い
ここまで亜鉛ダイカストの特徴をまとめましたが、アルミダイカストとの違いはどのような点にあるのでしょうか。
ここからは両者の異なる点についてみていきましょう。
違い①:重さ
まず、重量については、アルミニウムダイカストよりも亜鉛ダイカストの方が重く、金属的な重量感や色味を感じる材質になります。
違い②:強度
強度自体は亜鉛よりもアルミニウムの方が高くなります。
ただし、耐衝撃性は亜鉛のほうが高く、優れています。
違い③:加工性
前項に記した通り、亜鉛は溶解温度がアルミニウムと比べて低いため、亜鉛ダイカストの方が加工性は高くなります。
そのため、アルミダイカストには適さない複雑な形状の製品の製造が可能で、かつ、金型の寿命が長くなる特徴があります。
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亜鉛ダイカストの用途の具体例
それでは、亜鉛ダイカストの具体的な製品例をみていきましょう。
用途例としては、上記の亜鉛の特徴を活かし、以下のような精緻で精巧な部品に用いられています。
例①:ステアリングロック
盗難防止に必須である「ステアリングロック」。
高い防盗性と高い耐久性をもち、部品を車両に応じた部品が製造されています。
例②:ファスナーのつまみ
ファスナーを開け閉めする際に、エレメントをかみ合わせる役割を担う、ファスナーのつまみ。
ファスナーのつまみは、肩口、胴体、引手から成り、スライダーとも呼ばれます。
参考:YKK
例③:ラジエータグリルカバー
車両前面に位置するフロントグリルとも呼ばれる部位で、走行時にラジエーターへ風を取り込み、ラジエーターを異物の飛来から守っています。
クルマの顔となる部分でもあり、デザイン性にも注力され、車の魅力と個性を生み出す加工が施されています。
まとめ
薄肉で複雑な形状の鋳物が製造可能で、寸法精度が高く、優れた機械的性質をもつ亜鉛ダイカスト。
耐衝撃性と表面処理性の面からも、現在EV、半導体、環境維持部品、太陽光部品、発電機関係など、様々な部品製造から着目されています。
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