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亜鉛ダイカストにメッキはできる?表面処理の手順についてわかりやすく解説

亜鉛ダイカストにメッキはできる?表面処理の手順についてわかりやすく解説

亜鉛ダイカストについていただくご質問の多くに、「メッキ処理を施すことはできるのか?」というものがあります。

先に結論から書いてしまうと、メッキを施すことは可能です。

しかしこのようにお答えしただけでは不完全です。亜鉛ダイカストがどのような材質であるかという基本をしっかりと解説し、また処理の手順についても順序立てて説明しなければ、正しく理解していただけたとはいえないでしょう。製品を発注する立場の皆様にも必要最低限の知識を備えていただくことで、初めて円滑なやり取りが可能となります。

この記事では、亜鉛ダイカストという素材がどういうものであるかを解説するとともに、メッキなどの表面処理をする目的、そしてその手順、またアルミダイカストやABS樹脂といった他の素材への転換についても言及します。

最後まで読むことで、亜鉛ダイカストそのものだけでなく、ダイカスト全般のざっくりとした知識を身につけられます。

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帝産大鐘ダイカスト工業 製造事例

 

亜鉛ダイカストとは

亜鉛ダイカストとは、亜鉛合金を素材とし、ダイカストマシンを用いて鋳造した部品などを指します。

ダイカストをおこなう素材としては他にもアルミニウム合金などがありますが、それらと比べて亜鉛ダイカストは、高い寸法精度と高度な薄肉化が可能であるという点に特徴があります。またアルミダイカストなどと比べて鋳造する際の温度が低く済むため、金型の寿命が長くなるというメリットもあります。当然ながら金型は基本的に熱に強くできているのですが、それでもやはり高温よりは低温で扱うほうが道具としての寿命は伸びることになります。

ほかにも量産しやすいなどのメリットがあり、アルミニウムダイカストに匹敵する頻度で使用されています。

ただし酸やアルカリに弱いという性質を持っているため、塗装やメッキなどの表面処理を必須とする場面が数多くあることに注意する必要があります。

【関連記事】亜鉛ダイカストとは?5つの特徴と用途を解説

 

亜鉛ダイカストのメリット

亜鉛ダイカストのメリットとしては、主に以下の7つが挙げられます。

  1. 寸法精度が高いため複雑な形状を作れる
  2. 機械的特性に優れている
  3. 鋳造性が高く、薄肉化しやすい(0.2mm~)
  4. 低温で済むため金型の寿命が長くなり、コストダウンにつながる
  5. ホットチャンバーマシンでショットできるため生産性が高くなる
  6. 多種多様な表面処理を施すことで特性を付加できる
  7. 電気抵抗率がよい(ニッケルや黄銅よりも上である)

精密に作れるため複雑な形状の部品も作れることは、亜鉛ダイカストの大きな強みです。初めから複雑な形状を設計できるということは、そのぶんだけ他の製法と比べて製品を完成させるまでのプロセスを短く済ませられるということです。

機械的特性に優れている点も大きなポイントです。機械的特性とは、引張強さ・伸び・絞り・硬さ・衝撃値などといった、金属材料を加工する際に重要視される性質のこと。亜鉛ダイカストはこれらの点がいずれも非常に優れているため、取り扱いがしやすいというメリットがあります。

また本記事のテーマにも通じることですが、メッキを含めた多種多様な表面処理を施せるので、素の亜鉛合金にはない新たな特性を、状況に応じて好きなように加えられます。亜鉛ダイカストがさまざまな場面で用いられている理由の1つとして、多種多様な表面処理が可能であるという性質が関わっています。

 

亜鉛ダイカストのデメリット

一方でデメリットとしては、以下の5つが挙げられます。

  1. 空気などの不純物を巻き込んでしまうことにより、鋳巣が発生する
  2. 金型を使うための費用が必要である
  3. 鋳巣が出来にくい鋳造品と比べると、強度や靭性の点で劣る
  4. 酸性にもアルカリ性にも弱く腐食するため、表面処理を必須とする場合が多い
  5. 素材に錫が含まれ過ぎていると、粒間腐食を起こし脆くなりやすい

鋳造の際に不純物を巻き込んでしまうことは、ダイカストの一番のデメリットともいえる現象です。鋳造の際にはできる限り不純物が含まれないよう、さまざまな注意や工夫が必要になります。

また金型の寿命が長くなることがコストダウンに繋がるとメリットの項目では述べましたが、そもそも金型が必要であるという点では、そうではない鋳造方法と比べてコストがかかるのも事実です。金型は安いものではないので、この点はイニシャルコストとして意識しておかなければいけません。

また亜鉛ダイカスト素材は酸性にもアルカリ性にも弱いという性質を持っているため、表面処理をしなければ長期的に利用できる部品を作れないことが多々あります。この点は本記事のテーマであるメッキにも通じるところです。

 

亜鉛ダイカストにクロムメッキはできるの?

まず結論として、亜鉛ダイカストにクロムメッキを施すことは可能です。

クロムメッキのメリットとしては、以下の2つの点が挙げられます。

  1. 見た目が美しい
  2. 耐食性・耐熱性・耐摩耗性などに優れている

見た目の美しさは高級感や清潔感につながるため、美術品の器具や医療の現場でしばしば採用されます。それに加えて耐食性や耐熱性などにも優れているので、自動車の外装などにも用いられています。

逆にデメリットとしては、電流効率が悪く、技術的に取り扱いが難しいことが挙げられます。

電流効率が悪いため、電圧や温度管理などの点で品質を安定させることに苦労します。素材に弱電部と強電部と呼ばれるムラが発生し、不良品となってしまう可能性が高いのです。そのため高品質なクロムメッキを施したものを安定的に出荷するのは難しく、コストの高さや生産ペースなどに影響を与えることがあります。

 

表面処理をする目的

亜鉛ダイカストの表面処理を施す目的として代表的なのは、酸性にもアルカリ性にも弱いため腐食しやすいという性質をカバーすることです。そのままではほんの些細な環境の問題で製品が腐食してしまいかねないので、表面処理を施して劣化しにくくしているのです。

別の言い方をするのであれば、亜鉛ダイカストを用いる理由は「素材として耐性が強いから」ではないということになります。すでに述べたとおり、メリットは寸法精度が高いことや機械的特性に優れていることにあり、それと引き換えの欠点をカバーするために表面処理を施すことが一般的な手順となっています。

【関連記事】アルミダイカストの表面処理について徹底解説!メリットとデメリットも紹介

 

亜鉛ダイカストの表面処理の手順

亜鉛ダイカストの表面処理は、以下のような手順でおこなわれます。

まずは下地として銅メッキを施します。最終的にどの素材でメッキを施すにせよ、下地として使われるのは主に銅メッキとなります。

それから化成処理をおこないます。この処理において、亜鉛合金は比較的扱いやすい部類に属しています。

そして塗装と印刷をおこないます。これにより亜鉛ダイカストの表面が目的通りに処理されることになります。多くの場合、見た目をよくするだけでなく、耐食性や耐熱性を持たせることも狙いのうちであることはすでに述べたとおりです。

ちなみにダイカストの中で最もメジャーであるアルミダイカストの表面処理については、下記の記事を参考にしてください。

 

アルミダイカストやABS樹脂への転換

これまで述べてきたように、亜鉛ダイカストはさまざまな分野で広く使われてきましたが、最近では軽量化や加工性の観点から、アルミダイカストやABS樹脂への転換が進んでいるのが現状です。

それに加えて、これまで表面処理を行ってきたメッキ業者が廃業したり、メッキ処理に必要となるシアン化合物の取り扱いから撤退したりといったこともあわさって、そもそもメッキ加工できるところ自体が減ってきています。

上記の現状を鑑みると、これからは亜鉛ダイカストではなくアルミダイカストなどに焦点を当てて検討したほうが現実的であるといえるところはあります。参考までに覚えておいてください。

 

まとめ

亜鉛ダイカストへのメッキ処理をテーマに、その性質やメリット・デメリットなどについて解説しました。

後半でも述べた通り、亜鉛ダイカストは現在、さまざまな事情からアルミダイカストやABS樹脂へ転換する動きが起きています。しかし素材そのもののメリットが変わったわけではないので、今でも亜鉛を選ぶことが最適な選択肢である場面はもちろん存在します。

この記事を参考にして、亜鉛ダイカストへの理解を深めていただければ幸いです。

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